ぽんずlog

日常と好きなもの、とりとめもなく綴る雑記ブログ

【読書】『君は月夜に光り輝く』「死」に対する熱量よ

君は月夜に光り輝くを読みました。

著者のデビュー作とのことでした。

「最近本が読めていない、何か読みたい」と思って本屋をブラついていたときに、表紙の青が綺麗でふと手に取ったのですが・・・。いやぁ、なんだかすごくいいものを読めたな、と率直に思いました。

買ったその日に50ページほど読んだのですが、続きが気になりすぎて、翌日の夜に残り250ページほどを一気読みしました。楽しかったけれど切なかった。


生きたいと願ったヒロインが死を受けいれるまでの心情と、どこか死に憧れているように見える主人公の心情の対比の描かれ方が良かったなあ、と思います。

主人公友人の言動は、不思議なところがずいぶん多いように感じられましたが、最終的には友人なりの葛藤があったように思えます。人間の感情って本当に複雑だよなぁ、と読んで改めて思いました。


あとがきも読んでみて、著者の経験が結構ダイレクトにこの小説へ反映されているようにも思いました。「もしかして、主人公と同じ憧れを持っていないか?この著者は・・・?」と錯覚してしまいそうな、そんな感じがします。

「あなたのせいで、私はもう、生きたくてしょうがないの。」

 

自分がもうすぐいなくなると分かっているヒロインのこの言葉、ものすごく刺さりました・・・

ヒロインの最期については、はっきりとした描写はなく「十四日生きた」でとどまっていて、「息を引き取った」とか「死んだ」とか、直接的な言葉のチョイスでない点も良かったです。

主人公とヒロインが残りの時間をどのように過ごしたのか、読者の想像に委ねられているように感じました。


死に対する熱量。それと同じくらいであろう「生」への熱量。主人公もヒロインも、そして著者もすごいな、と思った作品です。

泣けるのは確かなのですが、不思議と読後の気分は穏やかでした。不思議と疲れた感覚はなかったです。


小説を読むのは、自分の知らなかった感情を言語化できるようになれそうな気がしますね(実際にできるようになるかどうかはいったん置いておいて)。子どもの頃は、あまり読書が好きになれなかったのですが・・・ようやく良さが、大切さが分かってきたように思います。

本の世界に浸れるって、幸せな時間なのかもしれませんね。


・なんだか最近、生きる意味が分からなくなってきた
・泣ける物語を読みたい
・新しい感情、気持ちに気付ける物語を読みたい

上記のような方の気持ちに寄り添ってくれそうな小説なのではないかと思います。